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頻尿・夜間頻尿

夜間頻尿とは

夜間頻尿は、夜中に1回以上トイレに行く症状が続くものです。この問題が患者さん自身やその周囲の人々に影響を及ぼす場合、治療が検討されます。ただし、ベッドに入った後にトイレに行く回数は夜間頻尿の診断には含まれません。夜間頻尿に対する治療の必要性は、生活スタイルや価値観に依存し、QOL(生活の質)に与える影響も異なります。治療の適否を判断するためには、QOLへの影響を評価し、治療が適しているかどうかを検討することが重要です。

夜間頻尿の問題点〜夜間頻尿は寿命を縮める?~

夜間頻尿は、睡眠の不足を招く要因の一つです。睡眠不足により、昼間に強い眠気や注意力低下、やる気の低下などの問題が生じやすくなります。また、不安が高まり、トイレのことが頭から離れず、負のスパイラルに陥ることもあります。研究によれば、夜間に2回以上トイレに起きる人は、転倒による骨折のリスクが高まり、寿命が短くなる可能性が指摘されています。

健康な日常生活を維持するためには、充分な睡眠が欠かせません。夜間頻尿に悩んでいる方は、当院にご相談ください。

 

夜間頻尿の原因

「高齢者」と「肥満、高血圧、前立腺肥大症、うつ病、糖尿病、心臓病」などの疾患にかかっている方々は、夜間頻尿に悩む傾向があります。夜間頻尿の主な原因は「多尿」および「夜間多尿」、「膀胱容量の減少」、「睡眠障害」の3つです。
「尿量の異常」が原因の多くを占めます。

多尿と夜間多尿

多尿は尿量が通常よりも多い状態を指し、主な原因は水分の過剰摂取、薬の副作用、アルコール、高血圧、尿崩症、糖尿病などです。夜間多尿は夜間の尿量が増える状態で、1日の尿量に占める夜間の尿量が高齢者で33%以上、若い人で20%以上で診断されます。加齢、高血圧、水分の過剰摂取などが主な原因で、高血圧治療薬や心臓病、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群なども要因です。

膀胱容量の低下

前立腺肥大症、過活動膀胱、間質性膀胱炎などが原因で、膀胱の容量が減少し夜間頻尿が起こります。前立腺肥大症では尿道が狭くなり、膀胱に負担をかけます。長期間膀胱に負担がかかると膀胱の筋肉が硬直し、正常に膨らむことができなくなり、尿意を感じる神経に異常が生じ、結果的に過敏な尿意と頻尿が発生します。膀胱鏡で膀胱内を観察すると膀胱内が筋張った肉柱形成をきたしていたり、膀胱憩室ができていたりします。

過活動膀胱や間質性膀胱炎も、尿意を感じる神経の異常により尿意が過敏になり、頻尿を引き起こすことがあります。

睡眠障害

不眠症も夜間多尿や夜間頻尿の原因となることがあります。睡眠が妨げられると、尿の産生が増え、尿意を感じやすくなります。さらに、夜間の静かな環境で尿意を感じやすくなるため、夜間頻尿のリスクが高まります。

夜間頻尿の原因を特定するのは難しい場合があり、尿意によって目が覚めることや浅い睡眠によって夜間頻尿になることがあります。特に、睡眠時無呼吸症候群による夜間頻尿は、自覚しにくいことがあります。

いびきがうるさいと指摘されたり、熟睡感がないと感じる場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみることがおすすめです。この検査を通じて、原因を特定し、適切な治療法を見つけることができます。

夜間頻尿の診断方法・必要な検査

夜間頻尿の原因は多岐にわたります。年齢だけでなく、生活習慣や薬物の変更によって改善できることもあります。状態に合わせて、以下の治療法から必要なものを選択します。

排尿日誌

夜間頻尿が多尿の要因なのか別の原因があるのかを明らかにするために、尿量を記録するのが有効です。尿量の記録には日誌帳と尿カップを使用します。以下は記録する項目です。

  • 用を足した時間(何時何分)
  • 尿量(何mL)
  • 飲んだ水分量(何mL)

日誌をつける期間は最低1日ですが、できれば3日間以上続けて記録をとることで、より正確な傾向を把握しやすくなります。尿量に関する記録を継続することで、適切な治療法の選択に役立ちます。

既往歴、併存疾患、内服薬、身体所見

夜間頻尿を引き起こす可能性のある疾患や要因を調査するために、以下の項目について詳しく調査を行います。

  • 高血圧、糖尿病、心不全、脳血管障害などの疾患の有無
  • 高血圧治療薬、利尿剤、抗うつ薬などの薬物治療の実施
  • 足のむくみ(下腿浮腫)の有無
  • 睡眠中のいびきの有無
  • 睡眠の質や熟睡感についての確認

これらの情報を収集し、夜間頻尿の原因や要因を明らかにし、適切な治療法や対策を検討していきます。

尿検査

尿検査は手軽でありながら、多くの情報を収集できる検査です。以下のような情報を得ることができます。

  • 血尿や膀胱炎の有無の確認
  • 蛋白尿や尿糖の有無から、糖尿病や腎臓病の可能性の評価

特に膀胱炎の可能性が高い場合、まず膀胱炎の治療を行い、その後の経過を観察していきます。尿検査は健康状態の評価や疾患の早期発見に役立つ重要な検査です。

 

画像検査

腹部超音波検査は、腎臓、膀胱、前立腺肥大(男性のみ)などの臓器の状態を評価し、尿路結石や膀胱腫瘍など、頻尿の原因となる疾患を発見するのに役立ちます。また、女性の場合、子宮筋腫による膀胱への圧迫が頻尿の原因となることがあります。

胸部レントゲン検査は、心不全の有無を確認するために行います。脳や脊髄に異常が疑われる場合、MRI検査が行われ、必要であれば高度医療機関との連携や専門医に紹介します。これらの検査を通じて、夜間頻尿の原因を正確に特定し、適切な治療プランを策定するのに役立ちます。

血液検査

水分摂取量が多くないのに尿量が多い場合、カルシウムやカリウムなどの血液中の数値を調べることがあります。これは尿量との関連を調べ、夜間頻尿の原因を特定するのに役立ちます。

心不全、腎不全、糖尿病の有無を調べるために、血液検査が実施されることもあります。特に男性の場合、前立腺がんの有無を確認するためにPSA(前立腺特異抗原)の値を調べることもあります。

尿流量測定検査(Uroflowmetry ウロフロ、残尿測定検査)

前立腺肥大が見られる男性の場合、排尿状態を正確に把握するために尿流量測定検査や残尿測定検査を行います。尿の出方や膀胱への負担を評価し、尿が貯留している可能性があるかどうかを判断します。特に「尿の出方が悪い」と感じる場合、膀胱に負担がかかっている可能性が高く、これが頻尿の原因になることがあります。

神経因性膀胱や骨盤臓器脱、子宮筋腫による膀胱の影響などで残尿が増加して、頻尿が引き起こされることは珍しくありません。症状や原因に合わせて適切な検査方法を選択し、結果に基づいて治療計画を立案します。夜間頻尿の根本的な原因を特定し、それに応じた対策を講じることが重要です。



夜間頻尿の治療

生活指導、食事・飲水量指導

多尿によって夜間頻尿が引き起こされている場合、治療と症状の緩和に向けたアプローチを行います。まず、患者さんが排尿状況を正確に記録する「排尿日誌」が重要です。1日の尿量や飲水量、排尿回数、および排尿のタイミングが詳細に記録されます。これにより、医師が排尿パターンを把握し、問題の特定や治療法の決定に役立てることができます。

また、水分摂取量の調節も重要です。排尿日誌を基に、患者さんの水分摂取量がどれだけかを評価し、必要に応じて調整します。特に夜間の水分摂取を制限することは、夜間頻尿の緩和につながりやすいでしょう。

また、カフェイン(例: コーヒーや緑茶)やアルコール、塩分の摂取が多い場合、これらの摂取量を制限することも考慮されます。

運動療法、行動療法

夕方や夜にエクササイズを行うことで発生する汗により、体内に貯留されている水分が排出しやすくなり、夜間の尿量が減少することが考えられます。この現象により、夜間頻尿が解消されやすくなります。運動によって体温が上昇し、発汗が促進されることで、体内の余分な水分が排泄され、膀胱の容量が夜間に増加する可能性が高まります。

また、ぬるめのお風呂や半身浴を行うことで、体の血行が促進され、水分の排出が促されます。体内の水分が効果的に調整されるため、夜間の尿量が減少し、夜間頻尿が緩和されるでしょう。さらに、膀胱を温めることで、血液循環が改善され、膀胱の容量が拡大する可能性があります。

足のむくみが問題の場合、昼間に弾性ストッキングを着用することで、足のむくみを軽減することができます。弾性ストッキングは足の血液循環を改善し、むくみを緩和するのに役立ちます。また、日中に水分を適切に摂取し、日中の尿量を増やすことも、夜間の尿量を調整するために役立つでしょう。

これらの方法は、夜間頻尿を軽減し、より快適な夜の睡眠を実現するための対策として検討されます。ただし、個々の状況や健康状態に応じて、最適な方法を選択することが重要です。

薬物療法

前立腺肥大症、過活動膀胱、および尿意過敏などの症状に対する治療には、異なるアプローチを用います。前立腺肥大症の患者さんには前立腺肥大の治療薬を処方し、膀胱容量を増やすことで頻尿の症状の改善を目指します。過活動膀胱や尿意過敏が原因で頻尿や膀胱の硬直が起こっている場合、抗コリン薬やβ3アドレナリン受容体刺激薬などを処方します。最近では、成人男性の夜間多尿の治療において、デスモプレシンという抗利尿ホルモンに類似した薬物が用いられています。

デスモプレシンは、夜間の尿の産生を抑制し、夜間尿量を減少させる薬です。人間の抗利尿ホルモンの分泌が年齢とともに減少するため、デスモプレシンの使用によって夜間頻尿の改善が期待されます。副作用として水分が体内に貯留することで低ナトリウム血症(水中毒)を起こすことがあるため注意が必要です。

その他

夜間頻尿の原因は患者さんによって異なります。高血圧、糖尿病、心不全、内分泌異常などが根本的な原因である場合、内科の専門家と連携して適切な治療を行います。また、睡眠時無呼吸症候群によって夜間頻尿が引き起こされている場合、睡眠時無呼吸症候群の原因を調査し、治療を行います。

夜間頻尿の一因として「気道閉塞による肥満」がある場合、CPAP(持続陽圧呼吸療法)という治療法を導入し、夜間にこの装置を使用します。CPAPは気道を保持し、深い睡眠を可能にし、夜間頻尿の改善に寄与します。

夜間頻尿の原因を特定し、適切な治療が提供されることで、夜間頻尿の症状が軽減し、生活の質が改善するでしょう。