- おねしょ(夜尿症)とは
- 大人のおねしょの原因
- 大人のおねしょ(夜尿症)の原因となる病気
- 大人のおねしょの対策
- お漏らしとおねしょの違い
- 夜尿症を治すためのポイント
- 本人の気持ちが最も大切
- 日常生活指導について
- 薬物療法
おねしょ(夜尿症)とは
夜尿症は、睡眠中に尿漏れが起きるものであり一般的に「おねしょ」として知られています。この症状は子供だけでなく、成人にも発生することがあります。子供の夜尿症は通常、排尿に関する機能が未発達であることが原因で、成長とともに自然に解消されることが多いです。しかし、大人の夜尿症には重要な疾患が潜んでいることもあるため、泌尿器科を受診し、原因を特定することが大切です。
子供は成長とともに昼間の排尿に慣れ、その後夜間のコントロールも向上していきます。多くの子供は2~3歳でおむつを卒業する傾向がありますが、一部の子供は水分摂取過多や排尿機能の発達の遅れなどの理由から、5歳までに夜尿症の症状を経験します。ただし、6歳以上で週に1回以上夜尿症が続く場合、夜尿症の可能性が高まります。
大人の夜尿症には、子供の頃から持続する一次性夜尿症と、成人期に発症する二次性夜尿症の2つの形態があります。
大人のおねしょの原因
加齢
加齢に伴い、骨盤底筋と呼ばれる臓器をサポートする筋肉が緩み、尿漏れのリスクが高まります。女性は妊娠と出産によって骨盤底筋に損傷を負う可能性が高く、また尿道が短いため尿漏れがより起こりやすいです。加齢による筋力の低下や、寝ている間に目が覚めてもトイレに間に合わないなどにより、夜間に尿を漏らすことがあります。
自律神経のトラブル
自律神経は膀胱や尿道の緊張を調整し、無意識の体の機能を制御します。睡眠中に自律神経は膀胱の緊張を緩め、通常より多くの尿を貯蔵するよう調整します。しかし、自律神経の乱れにより、この調整が正常に機能せず、尿をためることができず、夜尿症が発生しやすくなります。強いストレス、不安、生活習慣の乱れなどが、自律神経の調整機能に影響を及ぼす可能性があります。
睡眠障害
質の高い睡眠は、抗利尿ホルモンの正常な分泌に重要です。抗利尿ホルモンは尿量を抑制する役割を果たします。睡眠障害、例えば寝つきが悪い、浅い睡眠、頻繁に起きるなどすると抗利尿ホルモンが減少し、睡眠中に膀胱が通常より多くの尿を貯蔵してしまうことがあります。これが尿漏れを引き起こす可能性があります。
生活習慣の問題
生活習慣や環境も夜尿症の発症に影響します。就寝時間が不規則である、寝酒を飲む、寝具から出てしまい冷えてしまうなどの習慣は、夜尿症を促進する可能性があります。睡眠中に頻繁に尿意を感じて目覚める場合や、トイレに関連する夢をよく見る場合も、夜尿症のリスクを示すことがあります。
大人のおねしょ(夜尿症)の原因となる病気
大人の夜尿症は、さまざまな要因によって引き起こされます。主な原因として、加齢に伴う骨盤底筋の弱体化、自律神経の乱れ、睡眠障害、疾患が挙げられます。加齢により骨盤底筋が弱まり、尿漏れが起こりやすくなります。自律神経の不調やストレスも関連しています。
さらに、夜尿症は病気によっても引き起こされる可能性があり、糖尿病に伴う末梢神経障害や腰椎脊柱管狭窄症などが挙げられます。前立腺肥大症、便秘、子宮脱などの尿路に影響を与える疾患も夜尿症の原因となります。また、睡眠時無呼吸症候群や気分障害も夜尿症に影響を及ぼします。
夜尿症が持続する場合、医師の診断と治療が必要です。適切な治療を受けることで、夜尿症の改善が可能です。お悩みがある場合は、医師と相談することが重要です。
過活動膀胱
過活動膀胱は、尿路に発生する病気で、膀胱が過度に活動し、頻尿や急激な尿意の増加、切迫性尿失禁などを引き起こす疾患です。この症状により、睡眠中の尿漏れや夜尿症が起こりやすくなり、日常生活の品質や外出、社交などに不安をもたらすことがあります。
前立腺肥大症
前立腺肥大症は男性の生殖器である前立腺が加齢とともに肥大しやすく、尿道を圧迫して正常な排尿を妨げる疾患です。これにより、頻尿や膀胱の過剰に尿がたまって漏れる(溢流性尿失禁)などの症状が生じ、おねしょの可能性も存在します。
神経因性膀胱
神経因性膀胱は、排尿に関する指令が脳から膀胱へ適切に伝わらない状態で、主な症状として蓄尿や排尿に関する問題が現れます。この症状は脳梗塞、脳出血、糖尿病などの原因により引き起こされます。早期の受診が肝要で、隠れた脳疾患や糖尿病の早期発見が必要です。
便秘
便秘は、蓄積した便が膀胱に圧力をかけ、尿の貯留を引き起こし、尿漏れのリスクを高める一因となります。慢性的な便秘は再発しやすいため、しっかりと治療を行うべきです。
糖尿病
糖尿病は高血糖状態により多尿症状を引き起こすことがあり、これによりおねしょのリスクが増加します。また、糖尿病の合併症として神経障害が発生する場合、神経因性膀胱が発症し、おねしょしやすくなります。定期的な検査と血糖値管理が重要であり、早期発見と適切な治療が必要です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に無呼吸を繰り返し、睡眠の質を悪化させる疾患です。充分な睡眠時間が確保されていても、熟睡できず、覚醒を繰り返すことから、睡眠不足や日中の強い眠気が生じることがあります。この状態では集中力が低下し、日中に何度も睡魔に襲われます。睡眠の質低下により、夜間の尿漏れやおねしょがより起こりやすくなる傾向があります。
大人のおねしょの対策
加齢
年齢に関連した夜尿症に対処するためには、積極的なアプローチが必要です。治療を受けて改善の見込みがあるため、アクティブに動き、体力や筋力を維持しましょう。また、ケア用品を利用して対処することも一つの解決策です。
ストレス
ストレスが夜尿症の原因となっている場合、ストレスの管理が重要です。原因を特定し、取り除くことが最も効果的ですが、できない場合でもストレスを軽減できる方法を探しましょう。趣味や楽しい活動に参加したり、リラックスできる環境を整えたりすることが役立つでしょう。
生活習慣
生活習慣の見直しも重要です。特に睡眠は重要で、十分な睡眠を確保しましょう。夜間に水分摂取を控え、寝る前にトイレに行く習慣を持つことが大切です。アルコールを就寝前に摂取しないようにしましょう。また、適度な運動やバランスの取れた食事、規則的な生活リズムを確立することで、健康的な生活を促進できます。
疾患
夜尿症や夜間の尿漏れが気になる場合、まずは泌尿器科を受診し、潜在的な病気が原因であるかどうかを確認することが重要です。症状の原因は泌尿器科専門医が評価し、適切な治療やアドバイスを提供します。ただし、症状の原因が泌尿器以外の場合、他の診療科の専門医を受診する必要があるかもしれません。たとえば、便秘が原因の場合は消化器内科、糖尿病が関与している場合は内科、睡眠時無呼吸症候群が影響している場合は睡眠外来などが考えられます。
お漏らしとおねしょの違い
お漏らしや夜尿症の症状を持つお子様のほとんどは、病気ではなく成長とともに自然に改善することが期待されます。実際、毎年15%ずつが自然に夜尿症を克服するとされています。しかし、お子様の年齢には個人差があり、自然治癒までの期間も異なります。したがって、お子様の自己評価や集団生活に影響を与える可能性がある場合、治療を早めに検討することが重要です。
小児泌尿器科の受診は、お子様のお漏らしや夜尿症に対処するために有用です。まれに、これらの症状が基礎的な疾患や異常に関連していることがあります。そのため、受診時には初めに検査が行われることが一般的です。これらの検査には、腹部や仙骨部の触診、尿検査、尿流測定検査、超音波検査などがあります。これらの検査は非侵襲的でお子様に負担をかけません。
トイレコントロール
赤ちゃんは膀胱のコントロールができないため、無意識の反射排尿を行っています。トイレトレーニングを始める時期になると、脳が膀胱からの情報を感知でき、尿をコントロールすることが可能になります。しかし、子供の膀胱はまだ未熟で、無抑制収縮と呼ばれる現象が起こりやすく、突然強い尿意を感じることがあります。この無抑制収縮は小学校低学年頃までに改善しますが、大人でも神経因性膀胱などで見られます。
トイレトレーニングでは、無抑制収縮が強くなる前にトイレに行って排尿し、徐々に膀胱の容量を増やすことが重要です。これによって膀胱の機能が向上し、昼間のお漏らしが減少することが期待できます。トイレトレーニングは通常1〜3ヶ月で改善が見られます。
トイレトレーニングが効果がない場合、抗コリン剤の処方が行われることもあります。また、家族全員の協力が重要で、子供を比較せず、お漏らしや夜尿症があっても理解し、積極的にほめることが大切です。
夜尿症を治すためのポイント
本人の気持ちを大切にする
夜尿症を治すためには、本人の意欲が非常に重要です。症状の改善には年齢に応じた発達と、本人が「治したい」という強い意志が不可欠です。周囲のサポートも重要ですが、生活習慣の改善や制限が効果的であっても、本人のモチベーションがなければ継続が難しいことがあります。
治療を始める際には、本人の意欲を尊重することが重要です。また、モチベーションが低下した場合は一時中断して見守ることも必要です。
排尿の仕組み
神経系の発達と脳と膀胱の連携が重要な役割を果たします。神経系が適切に発達し、脳と膀胱の連携が確立されると、睡眠中に尿が膀胱にたまると目が覚めてトイレで排尿できるようになります。このような神経系の発達と連携は薬物療法だけでは改善できないため、治療においては生活習慣の見直しや継続的なケアが必要です。
チェックするポイント
膀胱の大きさ
膀胱の大きさを確認し、機能的膀胱容量を評価します。これは排尿日記や膀胱訓練などで調査できます。機能的膀胱容量は、(年齢+2)×25 ミリリットルという式を使用して年齢に応じて推定できます。
夜間尿の濃縮
寝ている間に尿が濃縮されるかどうかを確認します。これは起床後の最初の尿の比重や浸透圧によって判定できます。抗利尿ホルモンは夜に多く分泌されるため、夜間に排尿を促すことはできるだけ控えるべきです。
本人の気持ちが最も大切
日常生活指導について
保護者の方に守っていただくこと
むやみに起こさない
睡眠中にお子様を起こすことは、抗利尿ホルモンの分泌に悪影響を及ぼす可能性があるため避けましょう。ただし、夜尿アラームの使用はこのルールの例外です。
叱らない
お漏らしや夜尿について怒ったり叱ったりすることは逆効果です。できるだけ多くのポジティブな行動を見つけ、ほめてあげることが重要です。
夕食は早めにとる
夕食は就寝の3時間以上前に摂るようにしましょう。これにより、夜尿リスクを低減させます。
便秘しないように食生活を整える
適切な食物繊維を摂り、乳酸菌を積極的に摂取しましょう。漬物などの高塩分食品は避けましょう。
お子様本人への指導
日中は水分をしっかりとる
午前中にお水やお茶を十分に摂るようにしましょう。
日没までに水分をしっかりとる
夏季は7時まで、冬季は5時までに水分をしっかりとってください。スポーツや発汗時にはその場で水分を補給しましょう。
寝る前に排尿させる
就寝前に必ずトイレに行き、排尿をしましょう。
排尿日記をつける
お子様本人ができるだけ自分で排尿日記をつけるようにしましょう。この日記は夜尿の量や膀胱の状態を追跡し、効果的な治療法を見つけるのに役立ちます。
膀胱訓練をする
午前中に十分な水分を摂り、夕方から就寝までになるべく排尿しないにようします。この訓練を毎日行って膀胱容量を増加させます。ただし、昼間のお漏らしのある場合は行わないよう注意しましょう。
薬物療法
夜尿症の治療には薬物療法があり、いくつかの薬剤が使用されています。
ミニリンメルト®
ミニリンメルト®は夜尿症治療に最も一般的に使用されている薬剤で、夜間の尿を濃くする働きがあります。この薬は舌の上に置くだけで溶けるため、水がなくても服用できます。薬剤の効果には個人差があります。副作用として、まれに水分貯留による低ナトリウム血症(水中毒)のリスクがある点に注意が必要です。
抗コリン剤
抗コリン剤は膀胱の容量を増加し、膀胱の異常収縮を抑える効果があります。これにより、尿を多くためられるようになります。ただし、薬物療法の一環として使用され、効果には個人差があります。
三環系抗うつ薬(トフラニールR)
三環系抗うつ薬は昔から夜尿症治療に使用されてきた薬剤で、脳と膀胱に作用することで症状の改善が期待できます。しかし、副作用として食思不振、嘔気、不眠、肝障害、重症の不整脈を引き起こす可能性があるため、他の薬剤で効果を得られない場合にのみ検討されることが多いです。
漢方薬
漢方薬は神経質、冷え症、のどの渇きなど、個人の体質や原因に合わせて処方できる薬剤です。漢方薬はある程度の効果が期待できますが、薬を中断すると約40%が再発する可能性があるため、生活習慣の改善などのコントロールが重要です。