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クラミジア感染症

クラミジア感染症とは

クラミジア感染症はクラミジア・トラコマティスという細菌によって引き起こされる性感染症です。主に性活動の盛んな10~20歳代で多く見られます。国内では感染者が100万人以上いると推定されており、その多くは女性です。
クラミジアは感染した人との性行為を通じて体液を介して感染します。1回の性行為で感染する確率は30~50%とされています。ただし、クラミジアは非常に弱い菌であり、共有したタオルや入浴などの日常的な接触では感染しません。
多くの場合、クラミジア感染は無症状です。そのため、感染者は気づかずにパートナーに感染を広げることがあります。男性の約50%、女性の約80%が無症状であるとされています。潜伏期間は通常1~3週間です。
クラミジア感染は主に性器に影響を及ぼしますが、アナルセックスによって肛門にも感染する可能性があります。男性では尿道炎から精巣上体炎に進行し、不妊症の原因になることがあります。女性では子宮頸管炎から骨盤腹膜炎や肝周囲炎を引き起こし、卵管炎から卵管狭窄や卵管の癒着を招き、子宮外妊娠や不妊症を引き起こすことがあります。

クラミジアの症状

男性 女性
尿道からのさらさらとした分泌物 おりものの増加(においの変化はほぼなし)
尿道口のかゆみ 性交時のかゆみ
排尿時の軽い痛み 不正出血
精巣上体の腫れ、痛み、発熱 下腹部痛(子宮頸管炎を引き起こす可能性あり)
  排尿時の痛み

クラミジア感染は性器だけでなく、口腔や結膜にも感染する可能性があります。特に口腔性交による咽頭感染がよく見られます。咽頭感染の多くは無症状であり、感染していても自覚症状が現れないことがあります。
さらに、クラミジアを含む体液が付着した手で目を触ると、目に感染する可能性があります。目の充血やかゆみ、目やになどの症状が現れた場合は、クラミジア感染の可能性を疑うべきです。

クラミジアの検査

検査方法として、男性は尿検査、女性は膣分泌物(ぬぐい液)、のどはうがい液、肛門は肛門分泌液(肛門から細い綿棒を少し入れて検査します)があります。男女ともに感染の機会から24時間後から検査を受けられます。ただし、女性は生理中は検査ができませんので、生理が終わってから受診してください。
検査は、抗原を調べる迅速検査とPCR検査があります。迅速抗原検査による即日検査は15~30分ほどと結果が出るまでの時間が短い一方で、精度はPCR検査に劣るため採用しておりません。PCR検査は病原菌の遺伝子を増幅して調べる検査で、2~3日後に結果がわかります。
咽頭にクラミジアが感染しているかどうかの検査は、綿棒で咽頭をぬぐう「スワブ法」と0.9%の生理食塩水を口に含んでうがいをしてうがい液を回収する「うがい液法」があります。うがい液法は患者さんへの負担が少ない上、咽頭の菌の回収率がよく、検出率が高いといわれています。両者ともにPCR法で感染の有無を検査します。当院では「うがい液法」を採用しています。

検査を受ける方へ

妊娠中や生理中の女性の場合、性器の検査(膣ぬぐい検査)は行えません。妊娠中の方はかかりつけの産婦人科医にご相談ください。生理中の方は、生理が終了してからご受診ください。ただし、妊娠中や生理中でも、咽頭検査や採血による検査は可能です。ただし、抗生剤を内服中の方は、検査の精度が下がる可能性があります。内服終了後、2週間以上経過してからの検査を推奨しております。

クラミジア感染症の治療

抗生剤の内服

クラミジア感染症の治療には、抗生物質の内服が一般的に行われます。通常、1回の治療で十分な効果が期待されますが、症状の重症度や個々の状況によっては、数回の点滴投与が必要な場合もあります。また、クラミジアと淋菌など他の感染症が併存している可能性もあるため、抗生物質の内服に加えて点滴治療が行われることもあります。
クラミジア感染症の治療は、パートナーも同時に治療することが極めて重要です。これは、パートナー同士で感染を行き来するリスク(ピンポン感染)を最小限にするためです。予防のためには、性行為の際には必ずコンドームを正しく使用し、オーラルセックスの際も同様の注意が必要です。また、不特定多数の相手との性交渉は感染リスクを高めるため、避けることが重要です。
治療を受けた後は、必ず治ったかどうかの検査を受けることが大切です。適切な治療を受けたとしても、耐性菌などの影響で完治していない可能性もあります。治療効果の判定は、抗生物質の投与終了後、2週間から4週間後に行われます。治療終了後すぐに検査を受けると、治療によって死んだ菌の影響で陽性の結果が出ることがあるため、この期間をおく必要があります。
治療後に症状が消失しない場合には、再検査が必要となります。これには、耐性菌の影響や再感染、他の性感染症との併存などが考えられます。

抗体検査では治癒判定はできません

クラミジアに感染していると、HIVに感染するリスクが通常の3〜5倍に増加するとされています。そのため、クラミジア感染症の検査を受ける際には、同時にHIV検査も推奨されます。特に感染リスクが高いライフスタイルをお持ちの方は、定期的な検査を行うことが重要です。

クラミジア感染症は、自覚症状がないまま進行し、卵管通過障害を引き起こし不妊症の原因となることがあります。しかし、感染初期の段階で適切な治療を受ければ、完治することが可能です。感染する機会があった場合や何らかの症状が気になる場合は、早期に医療機関を受診することが重要です。放置すれば後悔することになる可能性もあります。

HIVに関しても、感染のリスクを理解し、定期的な検査を受けることが重要です。感染の早期発見と適切な治療は、自身の健康だけでなく、周囲の人々への感染リスクを減らすためにも必要です。