前立腺肥大症の治療は薬にする?手術する? 前立腺癌になりやすい?
前立腺肥大症の治療はどんどん進化しています(薬物療法と手術)
前立腺肥大症というのは男性であれば誰しも経験する病気であり、老眼などの加齢に伴う変化と似たようなものと考えてよいかと思います。なぜ前立腺が肥大するのかはっきりした原因はわかっていませんが50代くらいから組織学的に大きくなっていきます。頻尿、尿の勢いが弱い、残尿感、キレが悪いなどの症状がでてくるのは50代をすぎて徐々に増えていきます。60歳代の男性のうち60%が症状があるといわれています。前立腺肥大のお話をすると、前立腺肥大があると前立腺癌になりやすいんですか?と質問されることがよくありますが、前立腺肥大症と前立腺癌は直接は関係していません。前立腺癌も年齢が上がるにつれて、なりやすい病気ですので(80歳以上の男性の2-3割以上が前立腺癌という報告もあります)、50歳をすぎたら一度は採血で前立腺特異高原(PSA)を測定して確認したほうが良いです。50歳で基準値である4.0を超えるようであればMRIなどの画像検査などさらなる検査をしたほうがよいです。現在はまずはMRIをとって前立腺癌を疑う所見がないか確認しますが、同時に前立腺肥大の程度もよくわかります。
前立腺肥大症の重症度とは
前立腺肥大の大きさと症状の強さは必ずしも関係しないことも多いので重症度を判定するのは難しいです。基本的にはエコーやMRIなどの画像検査を行うと前立腺の体積は測定できますので客観的な評価としては重要な項目になります。ただ一番重要なのは患者さんの自覚症状の強さになります。前立腺の体積がどんなに大きくても症状が全くなければ治療する必要はありません。一方で、夜間に何度も起きて眠れない、勢いが悪くて気持ち悪いなどの症状で困っているようであれば前立腺の体積が大きくなくても積極的に治療する必要があります。このような患者さんの症状の強さを評価する方法として国際前立腺症状スコア(IPSS)というのがあり、症状を点数にして35点満点のうち何点あるかで評価します。治療開始時の評価や治療中の効果判定などにつかっています。
https://www.kissei.co.jp/urine/data/checksheet.pdf
治療方法としては、最初は水分摂取のしかたなど生活習慣について改善してみるのと同時に、薬の治療を開始することが多いです。第一に使う薬としてはα1遮断薬というのがあり、タムスロシンやシロドシン、ナフトピジルという薬がよく使われています。これは前立腺部分の尿道を広げることで尿の勢いをよくする作用があります。最近ではPDE阻害薬といって、もともとはED治療薬としてつかわれていたタダラフィルが前立腺肥大症の治療として保険適用になっていますのでタダラフィルを使うこともあります。これは前立腺や膀胱の出口を緩めることで尿の出をよくする作用があります。また前立腺肥大が強い(体積が30-40ml以上)場合には、前立腺を縮小させる薬「デュタステリド」(5α還元酵素阻害薬)が保険適用で使えるようになっています。テストステロンの代謝産物であるジヒドロテストステロンを抑えることにより前立腺を縮小させる作用があります。
前立腺肥大があると出やすい症状
前立腺肥大症があると同時に過活動膀胱の症状も起こすことがよくありますので尿意切迫感があり尿漏れするというような場合にはさらに膀胱の収縮をおさえる薬として抗コリン薬(ベシケア、トビエース)やβ3作動薬(ベオーバ、ベタニス)をつかいます。抗コリン薬は膀胱の効果が強くなりすぎて尿を出したいのに出せなくなるリスク(尿閉)があるため、まずはβ3作動薬から追加していくことが多いです。このような薬を内服する場合には定期的に尿検査や残尿を測定することで尿路感染や尿閉にならないようなマネージメントをしてもらったほうがよいです。
薬で効果がない場合
前立腺肥大症は年齢とともに徐々に悪化していきますので薬をいろいろ追加していったけれど症状がよくならない場合には次の手段として手術があります。従来は前立腺を内側から削って尿の通り道を広げるTURP(尿道のトンネルを広げる手術)がよく行われていましたが、現在は他にも数多くの手術選択肢があります。水蒸気で前立腺を熱変性させて萎縮させる方法(Rezume)や、レーザーでくりぬく方法(HoLEP)、ワイヤをひっかけて固定する方法(ウロリフト)など、より体への負担がすくなく合併症が少ない治療が導入されてきています。
頻尿、残尿感、キレが悪いなどの症状がでてきた場合、クリニックに一度ご相談ください